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2012年8月21日火曜日

311以前のお茶 Sr-90とCs-137 (2)

311以前の茶の放射能汚染レベルのデータから

- 現在、お茶には結構Sr-90が入っていそう。-


311以前の茶のデータを今一度別の角度で見てみよう。 下の図は文部科学省が公開している日本の環境の放射線と放射能のサイトの環境放射線データベースから検索した結果をグラフにしたものだ。

検索条件:
 調査対象放射能測定調査(放射能水準調査)  食品試料の放射能水準調査 
 調査年度1957年度~2011年度
 調査地域全国 空域海域等の都道府県を特定できない地域
 調査試料農林産物  茶 
 調査核種Sr-90  Cs-134  Cs-137





図 311以前のお茶の放射能汚染レベル


このデータは日本の環境の放射線と放射能の環境放射線データベースから上の検索条件で検索し、各年度ごとの測定値の平均をとったものだ。検出されなかったサンプルのデータはここではプロットから省いた(n=1667, うち検出されなかったのは210)。311以前は今より精密に測定されている。今なら大部分が検出されずになる。


また、傾向をはっきりさせるために、縦軸の最高値を50 Bq/kg-乾 にしている。 このため、1963年のデータだけスケールアウトしている。1963年のCs-137 153 Bq/kg-乾, Sr-90 87 Bq/kg-乾である。Cs-134はこの年には測定されていない。


さて、上のグラフから次のことが言える。


  1. お茶の放射能の汚染は年々減ってきていた。データのある2009年ではCs-137は0.32 Bq/kg-乾燥である(前にも書いたように現在のような抽出したあとの量ではない抽出前だ。しかも乾燥状態であるから、今よりはるかに低い)。 1987年度のあたいが突然高くなっているのはソ連により1986年に行われた最大の水爆実験のせいだろう。
  2. Sr-90とCs-137の比が厚生労働省が食品安全基準設定のための根拠数字とした土壌のSr-90/Cs-137比 3 x 10-3 に比べて非常に大きい。平均するとほぼ1であり、最小でも 4 x 10-2でしかない。土壌からお茶への移行係数をいくらに設定しているのか確認できなかったから明確にはいえないがこれは奇妙だ。厚生労働省はお茶そしておそらくほかの葉菜のストロンチウム90の汚染レベルを過小評価していないか非常に気になる。この点は移行係数の設定方法について今一度確認作業をして報告したい。
ここから、現在のお茶には結構ストロンチウム90が入っているのではないかと心配される。 政府には以前のように精度よくセシウム137とストロンチウム90の測定を実施してもらいたいものである。


2012年8月19日日曜日

3.11以前(1963-) のお茶の放射性物質による汚染量

出典: 文部科学省 日本の環境の放射線と放射能 環境放射線データベース


  1. このデータから、茶の中の放射能汚染量は、過去をさかのぼって100 Bq/kg-乾を超えたことがないことがわかる。そしてここ10年余りは10 Bq/kg-乾であった。 
  2. 今の食品安全基準値 100 Bq/kgは生の食品に適用され、かつ、お茶では飲用の状態で評価することになっているから以前よりはるかに多い放射能の曝露を許容していることになる。


2012年8月17日金曜日

3.11前(1974-)の海水中のCs-137とSr-90


図1

 解説 
この図は、日本各地の海水1リットルあたりに含まれるCs-137の量について、1974年度から2009年度までの変化を表しています。Cs-137濃度はゆるやかに減少していましたが、1986年にチェルノブイリ原子力発電所事故の影響により一時的に増加しました。2010年3月現在、海水中のCs-137濃度は1970年代の1/2程度のレベルです。出典: 文部省 日本の環境の放射能と放射線

図2
 解説 
この図は、日本各地の海水1リットルあたりに含まれるSr-90の量について、1974年度から2009年度までの変化を表しています。Sr-90濃度はゆるやかに減少しています。2010年3月現在、海水中のSr-90濃度は1970年代の1/3のレベルです。出典: 文部省 日本の環境の放射能と放射線


1. 不連続性


原発事故以前は、海水中のCs-137, Sr-90は 10 mBq/Lを下回り、下降を続けていました。

また、当時は感度よく測定されていたことがわかります。 最近ではこのレベルだと不検出ということになっている。測定方法がおそらく違っている(過去は濃縮して測定していたはずだが今はそうでないのかもしれないと思っている。調べたらまた報告したい。) きっと、測定の仕方も3.11以前と以後の世界では違うということを意味しているようです。

次のような数値もあります。 
3.11以前の日本の津々浦々のSr-90測定値は、1~2 mBq/L であったのだ(単位に注意)。


表 1 海水中のSr-90の調査地点と測定値(2009年度 年間平均値)

(単位:mBq/L)
都道府県名調査地点測定値(平均値)
北海道余市湾1.2
青森県陸奥湾, 深浦沖1.4, 1.4
岩手県九戸郡種市町沖1.1
福島県原釜沖1.1
茨城県東海沖1.5
千葉県袖ヶ浦沖1.4
神奈川県小田和湾1.3
新潟県新潟沖1.6
愛知県小鈴谷沖1.1
大阪府大阪湾1.4
山口県阿知須町沖1.0
福岡県門司沖1.3
鹿児島県南さつま市万之瀬川沖1.2
沖縄県ホワイトビーチ沖0.93

   出典: 文部省 日本の環境の放射能と放射線


ところが、3.11以後次のようなことになっている。 




http://radioactivity.mext.go.jp/old/en/1600/2011/09/1600_091710Sr.pdf

元の図を見て欲しい。福島第一原発沖でSr-90はほかの核種とともに不検出となっているが、実は、検出下限は20 mBq/Lで測定しているのだ* ごまかしも良いとろこだ。

3.11以前以後で継続性がない。これで国民に安心や信頼を求めるのはどうかしている。


*2012/08/18 訂正 20 mBq/Lであって、20 Bq/Lでない。

2. 食品安全基準は正当化されるか

図1と図2を比較して欲しい。3.11以前 海水中のCs-137とSr-90の濃度比は10倍もいかない。現在、釣った魚は曲がりなりにもCs-137を測定しているが、Sr-90はほとんど測定していない。Sr-90の量はCs-137から推算出来ると考えているらしい。実際には、食品の新安全基準を定めるのに、Cs-137とSr-90の比を 1.0 : 0.003 としているそうだ(http://www.acsir.org/info.php?15)。

こんなことで食品安全基準は正当化できるのだろうか。



2012年8月15日水曜日

3.11以前(1974-)の日常食中のCs-137 ( < 1 Bq/人日)

 解説 
この図は、日本各地の日常食中に含まれるCs-137の量(1人1日あたりの食事中のCs-137量)について、1974年度から2009年度までの変化を表しています。Cs-137濃度はゆるやかに減少していましたが、1986年から1987年にかけてチェルノブイリ原子力発電所事故の影響により若干増加しました。2010年3月現在、日常食中のCs-137は1970年代の1/4程度のレベルです。出典: 文部省 日本の環境の放射能と放射線

下線部のように文部省が書いている意味も考えてみてください。 3.11以前は政府はどのように考えていたかがわかりませすよね。 そうです、できるだけ暴露量を減らそうという意図が読み取れます。

それが、3.11以後どうでしょう。 この態度の180度の変化を国民は感じ取っているはずです。 それが国民から安心が得られない理由だと考えていますが皆さんどうでしょう。

2012年8月14日火曜日

参照レベルとはなにか -- どうすれば国民は安心するか

国際放射線防護委員会 (ICRP)がいうReference level 参照レベルとは



" Reference level 
In emergency or existing controllable exposure situations, this represents the level of dose or risk, above which it is judged to be inappropriate to plan to allow exposure to occur, and below which optimisation of protection should be implement. The chosen value for a reference level will depend upon the prevailing circumstances of the exposure under consideration." ICRP103


参照レベル
 制御可能な緊急時又は被曝が現にある状況で、参照レベルは用量又はリスクのレベルを表している。それ以上では計画上、暴露をさせておくのが不適切と判断され、それ以下では防護最適化が図られるべきであることを意味する。選択された値は考慮中の暴露の現状によって違うものとなろう。」 ICRP103 ilelongue訳



緊急時暴露状況と現存暴露状況の文脈の参照レベル


参照レベルという言葉を、緊急時暴露状況と現存暴露状況の文脈でICRPは使っているのであるから、その文脈を離れたところで「安全」な値というのはそもそも誤りである。また、参照レベルというのは、それ以下の暴露では悪い影響を受けないレベルを意味するものでもない。

参照レベルは防護の基礎


参照レベルは防護の基礎である。つまり、防護策をとるかどうか、とった防護策が適切であるかどうかを判断する、防護策が適切であったかどうかを判断する(正当化する)基準である。 参照レベルより低ければ防護が適切であったと正当化できるわけだ。だから、「参照」なのだ。だから、「基準」なのだ。

参照レベルは安全の基準ではない


ここでいう、緊急時暴露状況と現存暴露状況における参照レベル(以下単に参照レベルと書くがそれはすべてこの意味である)は安全の基準値ではない。安全とされる閾値のない放射線の影響(特に大部分の発がん性)ではそれ以下で安全とされる、つまり、悪い影響はないという値は0でしかない。しかし、宇宙放射線を含め天然には放射線があり、1 mSvのオーダでの暴露は避けられない。でも、追加で人工的な暴露についてはそれを人工的に(人為的に)抑えることは可能であるのだから、放射線の暴露はできるだけ避けたほうが良いというのが基本的な考え方だ。




現存暴露状況における参照レベルは、許容できるレベル(allowable level)


放射線については悪い影響を受けるのと受けないレベルの境は安全サイドにたって0としなければならないから、安全レベル、安全な基準値は0でしかない。しかし、自然にも放射線の暴露があるのだから0にすることはできない。また、放射線が体にいい部分もあるから0にすることは適切でない。また、ごく一部の高い放射線レベルの地域を除き、天然の放射線はだれもが許容するだろう。 だから、「安全」とはいわずに「許容」できるレベルを参照レベルとするわけだ。ここでもう一度言う参照レベルは防護の基礎である。 




3.11以前へ--それが国家的目標となるべきだ。


3.11以前のような安心を得る方法は極めて明快である(その時点でも食品の放射能汚染の懸念はあったのではあるが)。理念的には3.11以前の値を参照値とすることだ。3.11以前の食品汚染レベルは、日本の環境の放射脳と放射線 のウェブページで見やすくまとめてくれている、文部科学省による立派な仕事がある。

しかし、原発事故は取り返しのつかない影響を日本人と日本の国土、そして、世界の人々と地球に与えてしまった。 3.11以前に戻すのはそう簡単にはいかない。日本の国土、人、食品がすべて「現に被曝がある状況」(現存被曝状況)となってしまっているのだ。原発とはそれほど酷いものだったのだ。だから、参照値は安全基準値ではないのだけれど、原発を選択してきた日本国民としてその「罰」として、ある程度の暴露は許容せざるを得ないわけだ。将来の子孫にもその「罰」がおよぶことはなんともやるせないが。

食品の汚染レベルは最終的には3.11以前に戻すことを目標としなければ、原発事故からの回復をしたことにはならない。参照値はそのことを踏まえ設定されなければならない。





食品の安全安心


人によって食するものには偏りがあるのだから、食品を食することによる放射線悪影響について、一般人向けの基準は、普通の食事(食事の平均的モデル)での許容できるレベルではなく、理念的には誰の食事でも許容できるレベルでなければならない。ばらつきがあるのだから、平均的な食事モデルで暴露する量より十分小さい値にしなければ誰もが安心できる基準とはならない。このように安全サイドに考えることを「保守的(conservative)」な考え方という。保守自民党というときの保守とは少し違う。

そのように保守的な基準値(参照値)が設定され、それを基準とした防護策がとれて、そのような食品の流通がされず、誰の口にも入らない状態となれば、本当の意味で人は安心する。


先にも述べたように、3.11以前の暴露状況に戻すことが、第一の目標だ。しかし、急には達成できない。しかし、その方向に政府が向かっていれば、国民は許容して安心するだろう。


現在の政府は決して3.11以前の暴露状況に戻すことを目標とはしていない。3.11以前の安心の基準となっていたさまざまな規則や慣習を次々と破っているのだ。どうしてそれで国民の安心が得られようか?













原発事故前(1974-)の野菜のCs-137汚染レベル

 解説 
この図は、日本各地の野菜(葉菜)1kgあたりに含まれるCs-137の量について、1974年度から2009年度までの変化を表しています。2010年3月現在、野菜(葉菜)中のCs-137濃度は1970年代の1/2程度のレベルです。
出典: 文部省 日本の環境の放射能と放射線

2012年8月12日日曜日

原発事故前のみかんの汚染レベルデータ


全ての地域におけるCs-137測定結果単位(Bq/kg)


食品:うんしゅうみかん

最小値: 0.014

最大値: 0.047

平均値: 0.026

全試料数: 12

検出数: 3

非検出数: 9

出典: 文部省 日本の環境の放射能と放射線