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2012年8月21日火曜日

311以前のお茶 Sr-90とCs-137 (2)

311以前の茶の放射能汚染レベルのデータから

- 現在、お茶には結構Sr-90が入っていそう。-


311以前の茶のデータを今一度別の角度で見てみよう。 下の図は文部科学省が公開している日本の環境の放射線と放射能のサイトの環境放射線データベースから検索した結果をグラフにしたものだ。

検索条件:
 調査対象放射能測定調査(放射能水準調査)  食品試料の放射能水準調査 
 調査年度1957年度~2011年度
 調査地域全国 空域海域等の都道府県を特定できない地域
 調査試料農林産物  茶 
 調査核種Sr-90  Cs-134  Cs-137





図 311以前のお茶の放射能汚染レベル


このデータは日本の環境の放射線と放射能の環境放射線データベースから上の検索条件で検索し、各年度ごとの測定値の平均をとったものだ。検出されなかったサンプルのデータはここではプロットから省いた(n=1667, うち検出されなかったのは210)。311以前は今より精密に測定されている。今なら大部分が検出されずになる。


また、傾向をはっきりさせるために、縦軸の最高値を50 Bq/kg-乾 にしている。 このため、1963年のデータだけスケールアウトしている。1963年のCs-137 153 Bq/kg-乾, Sr-90 87 Bq/kg-乾である。Cs-134はこの年には測定されていない。


さて、上のグラフから次のことが言える。


  1. お茶の放射能の汚染は年々減ってきていた。データのある2009年ではCs-137は0.32 Bq/kg-乾燥である(前にも書いたように現在のような抽出したあとの量ではない抽出前だ。しかも乾燥状態であるから、今よりはるかに低い)。 1987年度のあたいが突然高くなっているのはソ連により1986年に行われた最大の水爆実験のせいだろう。
  2. Sr-90とCs-137の比が厚生労働省が食品安全基準設定のための根拠数字とした土壌のSr-90/Cs-137比 3 x 10-3 に比べて非常に大きい。平均するとほぼ1であり、最小でも 4 x 10-2でしかない。土壌からお茶への移行係数をいくらに設定しているのか確認できなかったから明確にはいえないがこれは奇妙だ。厚生労働省はお茶そしておそらくほかの葉菜のストロンチウム90の汚染レベルを過小評価していないか非常に気になる。この点は移行係数の設定方法について今一度確認作業をして報告したい。
ここから、現在のお茶には結構ストロンチウム90が入っているのではないかと心配される。 政府には以前のように精度よくセシウム137とストロンチウム90の測定を実施してもらいたいものである。


2012年8月19日日曜日

3.11以前(1963-) のお茶の放射性物質による汚染量

出典: 文部科学省 日本の環境の放射線と放射能 環境放射線データベース


  1. このデータから、茶の中の放射能汚染量は、過去をさかのぼって100 Bq/kg-乾を超えたことがないことがわかる。そしてここ10年余りは10 Bq/kg-乾であった。 
  2. 今の食品安全基準値 100 Bq/kgは生の食品に適用され、かつ、お茶では飲用の状態で評価することになっているから以前よりはるかに多い放射能の曝露を許容していることになる。


2012年8月17日金曜日

3.11前(1974-)の海水中のCs-137とSr-90


図1

 解説 
この図は、日本各地の海水1リットルあたりに含まれるCs-137の量について、1974年度から2009年度までの変化を表しています。Cs-137濃度はゆるやかに減少していましたが、1986年にチェルノブイリ原子力発電所事故の影響により一時的に増加しました。2010年3月現在、海水中のCs-137濃度は1970年代の1/2程度のレベルです。出典: 文部省 日本の環境の放射能と放射線

図2
 解説 
この図は、日本各地の海水1リットルあたりに含まれるSr-90の量について、1974年度から2009年度までの変化を表しています。Sr-90濃度はゆるやかに減少しています。2010年3月現在、海水中のSr-90濃度は1970年代の1/3のレベルです。出典: 文部省 日本の環境の放射能と放射線


1. 不連続性


原発事故以前は、海水中のCs-137, Sr-90は 10 mBq/Lを下回り、下降を続けていました。

また、当時は感度よく測定されていたことがわかります。 最近ではこのレベルだと不検出ということになっている。測定方法がおそらく違っている(過去は濃縮して測定していたはずだが今はそうでないのかもしれないと思っている。調べたらまた報告したい。) きっと、測定の仕方も3.11以前と以後の世界では違うということを意味しているようです。

次のような数値もあります。 
3.11以前の日本の津々浦々のSr-90測定値は、1~2 mBq/L であったのだ(単位に注意)。


表 1 海水中のSr-90の調査地点と測定値(2009年度 年間平均値)

(単位:mBq/L)
都道府県名調査地点測定値(平均値)
北海道余市湾1.2
青森県陸奥湾, 深浦沖1.4, 1.4
岩手県九戸郡種市町沖1.1
福島県原釜沖1.1
茨城県東海沖1.5
千葉県袖ヶ浦沖1.4
神奈川県小田和湾1.3
新潟県新潟沖1.6
愛知県小鈴谷沖1.1
大阪府大阪湾1.4
山口県阿知須町沖1.0
福岡県門司沖1.3
鹿児島県南さつま市万之瀬川沖1.2
沖縄県ホワイトビーチ沖0.93

   出典: 文部省 日本の環境の放射能と放射線


ところが、3.11以後次のようなことになっている。 




http://radioactivity.mext.go.jp/old/en/1600/2011/09/1600_091710Sr.pdf

元の図を見て欲しい。福島第一原発沖でSr-90はほかの核種とともに不検出となっているが、実は、検出下限は20 mBq/Lで測定しているのだ* ごまかしも良いとろこだ。

3.11以前以後で継続性がない。これで国民に安心や信頼を求めるのはどうかしている。


*2012/08/18 訂正 20 mBq/Lであって、20 Bq/Lでない。

2. 食品安全基準は正当化されるか

図1と図2を比較して欲しい。3.11以前 海水中のCs-137とSr-90の濃度比は10倍もいかない。現在、釣った魚は曲がりなりにもCs-137を測定しているが、Sr-90はほとんど測定していない。Sr-90の量はCs-137から推算出来ると考えているらしい。実際には、食品の新安全基準を定めるのに、Cs-137とSr-90の比を 1.0 : 0.003 としているそうだ(http://www.acsir.org/info.php?15)。

こんなことで食品安全基準は正当化できるのだろうか。



2012年8月15日水曜日

3.11以前(1974-)の日常食中のCs-137 ( < 1 Bq/人日)

 解説 
この図は、日本各地の日常食中に含まれるCs-137の量(1人1日あたりの食事中のCs-137量)について、1974年度から2009年度までの変化を表しています。Cs-137濃度はゆるやかに減少していましたが、1986年から1987年にかけてチェルノブイリ原子力発電所事故の影響により若干増加しました。2010年3月現在、日常食中のCs-137は1970年代の1/4程度のレベルです。出典: 文部省 日本の環境の放射能と放射線

下線部のように文部省が書いている意味も考えてみてください。 3.11以前は政府はどのように考えていたかがわかりませすよね。 そうです、できるだけ暴露量を減らそうという意図が読み取れます。

それが、3.11以後どうでしょう。 この態度の180度の変化を国民は感じ取っているはずです。 それが国民から安心が得られない理由だと考えていますが皆さんどうでしょう。

2012年8月14日火曜日

参照レベルとはなにか -- どうすれば国民は安心するか

国際放射線防護委員会 (ICRP)がいうReference level 参照レベルとは



" Reference level 
In emergency or existing controllable exposure situations, this represents the level of dose or risk, above which it is judged to be inappropriate to plan to allow exposure to occur, and below which optimisation of protection should be implement. The chosen value for a reference level will depend upon the prevailing circumstances of the exposure under consideration." ICRP103


参照レベル
 制御可能な緊急時又は被曝が現にある状況で、参照レベルは用量又はリスクのレベルを表している。それ以上では計画上、暴露をさせておくのが不適切と判断され、それ以下では防護最適化が図られるべきであることを意味する。選択された値は考慮中の暴露の現状によって違うものとなろう。」 ICRP103 ilelongue訳



緊急時暴露状況と現存暴露状況の文脈の参照レベル


参照レベルという言葉を、緊急時暴露状況と現存暴露状況の文脈でICRPは使っているのであるから、その文脈を離れたところで「安全」な値というのはそもそも誤りである。また、参照レベルというのは、それ以下の暴露では悪い影響を受けないレベルを意味するものでもない。

参照レベルは防護の基礎


参照レベルは防護の基礎である。つまり、防護策をとるかどうか、とった防護策が適切であるかどうかを判断する、防護策が適切であったかどうかを判断する(正当化する)基準である。 参照レベルより低ければ防護が適切であったと正当化できるわけだ。だから、「参照」なのだ。だから、「基準」なのだ。

参照レベルは安全の基準ではない


ここでいう、緊急時暴露状況と現存暴露状況における参照レベル(以下単に参照レベルと書くがそれはすべてこの意味である)は安全の基準値ではない。安全とされる閾値のない放射線の影響(特に大部分の発がん性)ではそれ以下で安全とされる、つまり、悪い影響はないという値は0でしかない。しかし、宇宙放射線を含め天然には放射線があり、1 mSvのオーダでの暴露は避けられない。でも、追加で人工的な暴露についてはそれを人工的に(人為的に)抑えることは可能であるのだから、放射線の暴露はできるだけ避けたほうが良いというのが基本的な考え方だ。




現存暴露状況における参照レベルは、許容できるレベル(allowable level)


放射線については悪い影響を受けるのと受けないレベルの境は安全サイドにたって0としなければならないから、安全レベル、安全な基準値は0でしかない。しかし、自然にも放射線の暴露があるのだから0にすることはできない。また、放射線が体にいい部分もあるから0にすることは適切でない。また、ごく一部の高い放射線レベルの地域を除き、天然の放射線はだれもが許容するだろう。 だから、「安全」とはいわずに「許容」できるレベルを参照レベルとするわけだ。ここでもう一度言う参照レベルは防護の基礎である。 




3.11以前へ--それが国家的目標となるべきだ。


3.11以前のような安心を得る方法は極めて明快である(その時点でも食品の放射能汚染の懸念はあったのではあるが)。理念的には3.11以前の値を参照値とすることだ。3.11以前の食品汚染レベルは、日本の環境の放射脳と放射線 のウェブページで見やすくまとめてくれている、文部科学省による立派な仕事がある。

しかし、原発事故は取り返しのつかない影響を日本人と日本の国土、そして、世界の人々と地球に与えてしまった。 3.11以前に戻すのはそう簡単にはいかない。日本の国土、人、食品がすべて「現に被曝がある状況」(現存被曝状況)となってしまっているのだ。原発とはそれほど酷いものだったのだ。だから、参照値は安全基準値ではないのだけれど、原発を選択してきた日本国民としてその「罰」として、ある程度の暴露は許容せざるを得ないわけだ。将来の子孫にもその「罰」がおよぶことはなんともやるせないが。

食品の汚染レベルは最終的には3.11以前に戻すことを目標としなければ、原発事故からの回復をしたことにはならない。参照値はそのことを踏まえ設定されなければならない。





食品の安全安心


人によって食するものには偏りがあるのだから、食品を食することによる放射線悪影響について、一般人向けの基準は、普通の食事(食事の平均的モデル)での許容できるレベルではなく、理念的には誰の食事でも許容できるレベルでなければならない。ばらつきがあるのだから、平均的な食事モデルで暴露する量より十分小さい値にしなければ誰もが安心できる基準とはならない。このように安全サイドに考えることを「保守的(conservative)」な考え方という。保守自民党というときの保守とは少し違う。

そのように保守的な基準値(参照値)が設定され、それを基準とした防護策がとれて、そのような食品の流通がされず、誰の口にも入らない状態となれば、本当の意味で人は安心する。


先にも述べたように、3.11以前の暴露状況に戻すことが、第一の目標だ。しかし、急には達成できない。しかし、その方向に政府が向かっていれば、国民は許容して安心するだろう。


現在の政府は決して3.11以前の暴露状況に戻すことを目標とはしていない。3.11以前の安心の基準となっていたさまざまな規則や慣習を次々と破っているのだ。どうしてそれで国民の安心が得られようか?













原発事故前(1974-)の野菜のCs-137汚染レベル

 解説 
この図は、日本各地の野菜(葉菜)1kgあたりに含まれるCs-137の量について、1974年度から2009年度までの変化を表しています。2010年3月現在、野菜(葉菜)中のCs-137濃度は1970年代の1/2程度のレベルです。
出典: 文部省 日本の環境の放射能と放射線

2012年8月12日日曜日

原発事故前のみかんの汚染レベルデータ


全ての地域におけるCs-137測定結果単位(Bq/kg)


食品:うんしゅうみかん

最小値: 0.014

最大値: 0.047

平均値: 0.026

全試料数: 12

検出数: 3

非検出数: 9

出典: 文部省 日本の環境の放射能と放射線

原発事故以前の淡水魚のCs-137の汚染 2 Bq/kg-生 以下


 解説 
この図は、日本各地の淡水魚1kgあたりに含まれるCs-137の量について、1974年度から2009年度までの変化を表しています。Cs-137濃度はゆるやかに減少しています。2010年3月現在、淡水魚中のCs-137濃度は1970年代の1/3程度のレベルです。

原発事故前の精米のCs-137汚染レベル

 解説 
この図は、日本各地の精米1kgあたりに含まれるCs-137の量について、1974年度から2009年度までの変化を表しています。Cs-137濃度はゆるやかに減少しています。2010年3月現在、精米中のCs-137濃度は1970年代の1/3程度のレベルです。


出典:文部科学省 日本の環境の放射能と放射線

原発事故以前海水魚のSr-90汚染は 1Bq/kg-生未満

原発事故以前 1974年から2010年のあいだに海水魚中のストロンチウム90は1 Bq/kg-生 を超えることはなかった。
 解説 
この図は、日本各地の海水魚1kgあたりに含まれるSr-90の量について、1974年度から2009年度までの変化を表しています。Sr-90濃度はゆるやかに減少しています。2010年3月現在、海水魚中のSr-90濃度は1970年代の1/2程度のレベルです。

(出典: 文部科学省 日本の環境放射能と放射線)

2012年7月11日水曜日

原発事故前, 牛乳中の放射性セシウム137による汚染は1Lあたり1ベクレルを超えることはなかった。 文科省は継続して「日本の環境中の放射能と放射線」のデータを公表してください。



図の出典: 文部科学省 日本の環境放射能と放射線



福島原発事故の前にはチェルノブイリ原発事故等の影響から食品中の放射性物質の存在が危惧され、注意深く観察が続けられていた。 文部科学省はその「日本の環境放射能と放射線」のサイトで2010年まで詳しくデータを公開している。

どういうわけか、いやうがった見方をすれば意図的にか2011年からデータが更新されていない。 原発事故の影響を如実に示すことになるからだろうか。


原発事故が起こった後であるからこそ、この様なデータは継続して測定し、更新し、公表してこそ意味がある。


政府の基準値の設定の仕方は仮定に仮定を重ねている。 間違いのない目安は、原発事故以前の放射線汚染レベルだ。 これを目安にすれば少なくとも原発事故以前とは変わらないと言える。



2012年7月8日日曜日

原発事故前の海水魚中の放射性セシウム137による汚染は1kgあたり1ベクレルを超えることはなかった。

食品の基準値が1kgあたり100ベクレルに緩和された。 いろいろと理屈をこねて安全であると言っているが、原発事故以前は100ベクレルの汚染というのは実態としてほとんどなかったのである。ここに示した資料は1974年から2010年に調査されたセシウム137による海水魚の汚染の実態である。文部科学省が調査発表している資料からの抜粋である。

福島の事故後の基準値はこの実態の100倍を超えた汚染について国民に許容することを迫るものなのである。

選挙は近い。今一度この問題について国民は注視し、立候補者が何を語るか注目したい。



出典: 文部科学省 日本の環境放射能と放射線

2012年3月31日土曜日

新しいページ

放射線と放射能から自ら守ろう



まずは今回の地震と原発事故に被災された方に心よりお見舞いをもうしあげますとともに、一日も早い復興と皆様のご健康をお祈り申し上げます。



放射線と放射能から自ら守ろう


私がこのブログを起こした理由:自己防護の重要性の強調


このブログを立ち上げた目的は次のとおりです。

ひとつには、現在の原発事故後の汚染されてしまった列島に暮らす我々にとって、自身と家族、子供たち、同僚が、放射能と放射線による悪い影響を受けるのを防ぐことは今まさに重要であることを強調することです。

この自己防護の必要性の強調とともに、その具体的方法への水先案内となる場をご提供することを目指しています。



汚染された地域住民の防護



放射能に既に汚染されてしまった地域からの退避が原発事故による放射線や放射能に浴びる可能性を抑え、その影響を極小にする最も有効な方法ですが、 国際放射線防護委員会(ICRP)が2008年に公開したレポート  No 111(ICRP 111a) でも指摘されているように、そこに残って住むこともあるでしょう。 また既に列島の広い地域が多かれ少なかれ汚染されてしまっていると考えたほうがよさそうです。そのため、状況に応じた十分な放射線暴露防護方策を取る必要があります。それには、住人自身による防護、自己防護(self-protection, self-help protection)が行政当局による防護策とともに、不可欠です。 


ICRP 111 は、この原発事故緊急事態以後の日本において、その影響を極小にし、かつ、生活を送っていくための基本的な考え方を専門家が整理したもので、具体的な方法を考えていくための手がかりとなるものです。


自己防護


行政当局による防護策と自己防護は車の両輪


自己防護、つまり、自助による放射線防護の考え方は、放射能に既に汚染されてしまった地域においては行政当局による放射線防護方策ととも重要です。 これらは車の両輪にたとえることができるでしょう。当局の方策だけでも自助努力だけでも車は動きません。両方の車輪がうまく連携して初めて目的方向に走ることができます。


健康への影響を極力抑えるためには、放射線を出来るだけ浴びないように、放射能を口や鼻から体に取り込まないように行動する必要があります。浴びる程度は、個人の行動によって大きく違ってきます。 また、特に放射線への影響を強く受ける人、例えば、胎児や子供、また、免疫の低下している人は特に注意した行動が必要です。また、周りの人がそうできるよう気を配る必要があります。この自己防護の具体的な内容はそれぞれの人の身体的状況や、土地や建物の状況、気象条件などによって違う面が出てきます。 その個々人の状況に応じた行動をとれば、暴露する量(浴びる量)はある程度抑えることが可能で、それにより悪い影響を受けるのを極小にすることができます。


行政側が汚染が高いので漁を禁止しているような海域で釣りをして、汚染された魚を自分や他人が食してしまうと、当然、そうでない人より体に取り込んでしまう放射能が、多くなり、体の中で放射線をより多く浴び(内部暴露)、体を悪くしてしまうおそれが小さくありません。また、放射能の汚染が高いきのこを食すると同じことが起こる可能性が地上でもあります。無論、すべての魚やきのこが汚染されているわけではありませんしその程度の問題もあります。(したがって食品の汚染量に関する情報を知っておくことは極めて重要になります。これは詳しく別のところで記載したいと考えています。) また、除洗をした公園で遊ぶ(遊ばせる)か、そうでないかによって違うことも言うまでもないでしょう。 このように、暴露を抑えるためには「自己防護」が不可欠です。


この考えは ICRP 111a において推奨されています。 暴露を抑えるのにはそこから退避するのがもっとも確実ですが、それでもなお、そこに残って住むこともあるでしょう。実際チェルノブイル事故後もそうだったと記載しています。そしてその地に住むのであれば、行政による防護方策とともに、自己防護が不可欠であるというわけです。


自己防護の具体的方策については既にいろいろな資料がある



自らが暴露を抑える方策、 自己防護 の方策については多くの方、専門家だけでなく関心の高い方がインターネット上、または、書籍により発表されております。 このブログではそれらへと御案内するページを追加していきたいと考えております。


ICRPが自己防護の重要性を指摘していることが紹介されていない



国際放射線防護委員会(ICRP)が2008年に発行した報告書 No. 111には、原発事故の緊急事態以後の日本の状況にまさにピッタリとあてはまるのではないか思われる状況(existing exposure situation, 現存暴露状況--要するに既に暴露が起こってしまっている状況)への対応の手引き(guidance)を提供しています。 この手引きを参考として現在の状況について考え、対応策を考えることは極めて重要であり、すでに、いくつかの試みがなされているようです。

ただ、いくつかの紹介事例をみると、ICRPが「自己防護」(self-protection, self-help protection)、まさに被災民にとって重要な点、について重視していることを現時点では十分紹介していないように思えます。一方、自己防護方策については多数の方がネット等でご紹介されておりますが。ICRP 111との関係が十分に示されているかというと現時点では私の見る限り疑問があります。おいおいこの点は改善されていくことが期待されます。その改善にこのブログがいくばくなりとも役に立てばと思っています。


当局の防護策と被災民自身による防護策(自己防護策)は車の両輪であり、それはうまく連携していなければ目的の方向へは向いません。したがって、そのことの重要性もまたここで強調しておきます。そのことを下記のICRP 111の抜粋した要約でも言っているのだと思います。


自己防護策の水先案内


そこで、この「自己防護」 の概念を中心に、ICRP 111を私なりにご紹介し、それに、ICRP 111を手引きとして、私の意見を加えて、具体的な方策について提案や、他の方々の書かれた方策等への水先案内をしたいと考えています。


低線量での放射線の影響について



低線量での放射線の影響をどう見るかは防護策立案に大きな影響がありますが、ここでは議論するつもりはありません。
放射線はいかなる量であれ人体に影響を与えるとの見解が優勢であると理解しています。 100 mSv の放射線を浴びるとそのがんによる死亡確率bが 0.5% 上昇するとのデータがあります。 100 mSv未満では発ガンについて有意なデータは得られていないようですが、安全サイド(conservative)で考えて、100 mSv未満でもそれに比例した影響があると考えた、直線あり閾値モデル(LNTモデル)があり、ICRPも採用しています。 (ICRP 報告書 No. 99) 。 


しかし、このモデルは科学的でない、100 mSv未満のある量では低線量ではかえって健康に良いという見解もあり、また、そもそもその低線量では確かなデータがなく分からないのだから100 mSv未満では防護の必要性がないとかの主張等々に基づいて、自己防護を重視されない方もいらっしゃるようです。


一方で、ICRPが採用しているモデルはおもに原爆による瞬間的に多量に放射線に暴露した時の発がん性のデータに基づいており、低線量を長期にわたって浴びる状況では別のメカニズムで別の病気が発症する、また、しているデータがあると主張されている方もいらっしゃいます。また、内部被曝の問題を外部被曝のデータだけから推論するのは危険だとの考えもあると思います。


私にも自分なりの考えはありますが、いずれの主張が正しいと断定できる立場でもありませんし、また、それを主張したところでまさに今ある放射線や放射能への暴露の問題には役に立ちません。


いずれにしろ低線量での危険性の指摘もあることですし、あえて、放射線を治療や検査の目的で意図的に浴びることや食品に殺菌やジャガイモの発芽抑制のために放射すること(人が浴びるわけではありませんが)を例外として、放射能を体に取り込んだり(口や鼻等から)、放射線に浴びる必要もないと思いますので、やはり、実現可能な自己防護策をとることはお勧めすべきことだと思います。 




a ICRP 111


被災民の参加と行政当局によるその支援

ICRP 111にはその要約で次のように書かれています:
"The report also considers practical aspects of the implementation of protection strategies, both by authorities and the affected population. It emphasises the effectiveness of directly involving the affected population and local professionals in the management of the situation, and the responsibility of authorities at both national and local levels to create the conditions and provide the means favouring the involvement and empowerment of the population." 
つまり、
「この報告書で今ひとつ考察したのは、防護方策、それは行政当局と被災民によるものなのだが、その実施の実際面についてである。強調しておきたいのは、被災民と地域の専門家がその状況の管理において直接参加すること、また、国と地方のレベルの責任ある行政当局が人々の参加と権限の拡大を図るような条件を整備し、手段を提供することが効率的であるということだ。」
私のこの試みも、日本人として防護戦略立案への参加、特に自己防護策の立案と実施の寄与を意図したものと位置づけることができると思います。これはICRP 111の主旨に沿ったものであると考えています。日本ではこういった市民の参加を認めてこなかったのが現状ではないでしょうか。 やったとしても形だけでした。たとえば、原発設置者による原発安全に関する住民会議でのヤラセ行為などはまさにその典型です。これは安全のために役に立ったかというと怪しいものです。 事故前に住民を含めて、ICRP111の言う防護戦略を立てておく必要があったのではないでしょうか。 そもそも、それが正しく行われていれば事故もなかったかもしれません。 


b0.5%はがんによる死亡の確率

0.5 %という数字は、国際放射線防護委員会(ICRP)の2007年の勧告中にある、1シーベルトあたりの危険率(5 %)に由来していると思います。つまり1シーベルトで5 %ならば、その10分の1の100ミリシーベルトならば、危険率は0.5%になるというわけです。しかし、この数字は発がんリスク(がんになるリスク)ではなく、がんで死ぬリスクです。ここでは、2人に1人ががんになるというのは発がんの確率ですから、ここに、危険率(がんで死ぬリスク)の0.5 %をプラスしているのは、発がんリスクとがん死亡のリスクを混同していると考えられます。」 (慶応義塾大学医学部放射線科講師 近藤誠 氏 by (社)SMC  ・SMC-Japan.org     )



ICRP 111 の利用について


ICRPは、このレポートを今回の原発事故に対応して、日本人に対しては無償で読めるように提供しています。 英語ですが非常に役に立つものです。 ICRPには日本人の一人として感謝の気持ちを表したいと思います。 ダウンロードは以下のICRPのサイトから実施できます。


ダウンロードページ: http://www.icrp.org/publication.asp?id=ICRP%20Publication%20111


ICRPのこの好意により、抜粋や翻訳についても、日本人が日本人向けであれば自由に実施してよいと考えました。全文を訳すつもりはありませんが、自己防護の多くの部分は抜粋、翻訳、解説を提供できればと考えています。


著作権の専門家でもないので、もし、このことに問題を感じられるようでしたらご教授いただければ助かります。

翻訳はアイソトープ協会から



また、この日本語訳は日本アイソトープ協会により出版されています。


http://www.jrias.or.jp/index.cfm/6,12071,76,174,html




謝辞

Acknoledgement

I as a Japanese would like to appreciate very much ICRP's kindness of offering the ICRP report  No. 111 without charge for our Japaneses.



なお、下記にいただいたコメントは、このブログの設置者である私が不都合と判断した場合、削除させていただく場合もありますのであらかじめご了承ください。